ココナッツグレン日本代表・早野氏インタビュー
マウイ島の山奥から日本へ。ココナッツアイスクリームブランドを育てるということ
——ココナッツグレンの日本法人はいつ頃から始まったのでしょうか。
早野氏:
日本の法人としては2024年からです。
ただ、ブランドとして日本に入ってきたのはもう少し前で、2019年7月に表参道で最初の店舗をオープンしました。マウイ島から日本へ上陸した、という形ですね。
当時は非常に好調なスタートだったのですが、オープンから半年ほどでコロナ禍に入りました。表参道から人がいなくなってしまい、一度ブランドとしての動きを休止せざるを得なかったんです。そこから本格的にブランドとして再稼働したのは、2022年頃になります。
広告代理店から、自分たちのブランドを持つ方向へ
*——そもそも、ココナッツグレンを日本で展開しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
早野氏:
当時、私は広告代理店の仕事をしていました。広告といっても領域は広いのですが、会社の方針として「自分たちでコンテンツやブランドを持とう」という考えがありました。
その流れの中で、いろいろなブランドや事業の種を探していた時に、たまたまココナッツグレンと出会ったんです。
ビジネス的な視点だけでなく、個人的にも惹かれるものがありました。もともと食べ歩きや美味しいものが好きでしたし、無添加やオーガニックにも関心がありました。そういう意味でも、このブランドはすぐに気になりました。
マウイ島の山奥で出会った、映画のような世界
——実際にマウイ島のお店にも行かれたのですか。
早野氏:
はい。マウイ島へ行って、まず驚いたのはそのロケーションです。
ハワイというと、多くの人はオアフ島やワイキキのような海のイメージを持つと思います。でも、マウイ島はもっと自然が濃い場所です。特にココナッツグレンの店がある場所は、山の中というか、ジャングルに近いような場所なんです。
空港から車で2時間半ほど、山道をずっと登っていきます。日本で言えば、いろは坂のような道をさらに何倍もしたような、うねうねした道です。運転している人でも気持ち悪くなるくらいの山道を進んだ先に、突然お店が現れるんです。
そこには上半身裸の男たちがいて、鉈でココナッツを割っている。まるで映画のような世界でした。まず、その世界観に圧倒されました。

創業者グレン氏のルーツは、ミシュランレストランのシェフ
——創業者のグレンさんは、どういう方なのでしょうか。
早野氏:
創業者はグレン・シムキンスというアメリカ人です。
もともとはシェフで、ミシュランの星付きレストランでも働いていた経験があります。
フレンチやイタリアンなど、さまざまな料理のルーツを持っていて、その経験がココナッツグレンのレシピにも反映されています。だから、単なるアイスクリームというより、料理としての発想がかなり入っているんです。
アイスクリームではあまり使わないようなスパイスを使うこともありますし、レシピ自体が独創的です。そこがココナッツグレンらしさの一つだと思います。

40歳を迎えるタイミングで、自分の人生を重ねるブランドに
——その後、独立されてからもこのブランドを続けようと思った理由は何ですか。
早野氏:
前の会社でこのブランドを日本に持ってきたということもあり、強い愛着がありました。
ちょうど自分が40歳を迎えるタイミングでもあったんです。これからの人生で、死ぬまで仕事はしていきたいと思っていました。その中で、何をやっていくのかを考えた時に、自分が本当に好きなことだけをとことん追求したいと思いました。
その時に浮かんだのが、このブランドでした。
今、独立して3年目になります。他にもいろいろなお話をいただくことはありますが、やはり自分の使命は、このココナッツグレンというブランドを日本で育てていくことだと思っています。今はもう、どっぷりこのブランドに浸かってやっています。

将来は、自分たちの畑で採れた素材を使う店へ
——マウイ島のお店では、自分たちで育てた果物も使っているそうですね。
早野氏:
そうです。お店の裏に畑があって、そこで育てた果物を使ってアイスクリームを作っていました。
それを見た時に、自分も将来的には畑を持ちたいと思いました。自分たちで育てた素材を使って、商品を作り、お店で出す。そういう形をいつか日本でもやりたいです。
場所としては、沖縄のやんばるのようなエリアがイメージに近いです。自然が深くて、何もないけれど、その何もなさが魅力になる場所。ココナッツグレンの世界観とも合うと思っています。
麻布十番店が支持される理由
——麻布十番のお店は2022年10月のオープンですね。お客様の層はどのような感じですか。
早野氏:
麻布十番は少し特殊な場所です。周辺に大使館が多いこともあり、外国人のお客様が全体の4〜5割ほどいらっしゃいます。
それに加えて、麻布十番には食に感度の高い方が多いです。グルメな方や、個性的なお店をよく知っている方が集まる街でもあります。
ココナッツグレンは、オーガニック、ヴィーガン、無添加といった特徴があります。さらに、レシピ自体もレストラン品質で、手間暇をかけて作っています。そうした部分が、麻布十番のお客様にはしっかり伝わっているのかなと思います。
日本の気候と素材に合わせた、日本版レシピ
——商品は日本で作っているのですか。
早野氏:
はい。日本で作っています。
2019年に最初の店舗をオープンする時、グレンも来日して、日本の気候や素材に合わせてレシピを調整しました。ハワイで手に入る素材と、日本で手に入る素材は当然違います。だから、日本で再現できる形に改良していきました。
もちろん本国の味に近づけることは大事にしています。グレン本人が直接調整しているので、かなり忠実にレシピを守っています。ただ、素材や環境の違いがあるので、微妙な違いはありますね。
子どもやアレルギーを持つ人にも届くアイスクリーム
——お客様は大人が中心ですか。それとも子どもも来られますか。
早野氏:子どもも来ます。お小遣いを握りしめて来てくれる子もいます。
それから、自分の子どもに良いものを食べさせたいという親御さんも多いです。最近は乳製品を摂取できない子どもも増えていると感じます。アイスクリームを食べたことがないという子もいて、そういう子たちが親御さんと一緒に来てくれることもあります。
ココナッツグレンは乳製品を使っていないので、そういう方にも楽しんでいただける可能性があります。それは大きな意味があると思っています。
宣伝はSNSと口コミのみ。それでも全国から注文が入る
——通販も伸びているそうですね。
早野氏:
はい。おかげさまで通販も伸びています。
SNSをきっかけに知ってくださる方が非常に多いです。そこから「食べてみたい」と思って、通販で購入してくださる。今では47都道府県から注文をいただいています。沖縄など送料が高い地域からも注文があります。
広告に大きなお金をかけているわけではありません。基本的にはSNSと口コミだけです。大きな会社ではないので、できることは限られています。その中で、SNSと口コミを大切にしています。
現在は国内4店舗。拡大よりも“ブランドを育てる仲間”を重視
——現在の店舗数を教えてください。
早野氏:
国内では4店舗です。
直営が麻布十番と沖縄・北谷。フランチャイズが大阪・北浜と東京・南池袋です。
——今後はフランチャイズ展開を広げていく考えですか。
早野氏:
もちろん、将来的には店舗を増やしていきたいです。ただ、闇雲に増やしたいわけではありません。
今あるフランチャイズの2店舗も、単なる加盟店というより、ビジネスパートナーに近い存在です。このブランドが好きで、一緒に育ててくださる方たちとやっています。
一般的なフランチャイズは、本部があって、加盟店がその指示に従うという形が多いと思います。でも、私たちは少し違います。北浜のパートナーにはマーケティングをお願いしていたり、池袋のパートナーには施工や工事の面で力を借りていたりします。
本部と加盟店というより、ココナッツグレンというチームとして、みんなでブランドを育てている感覚です。

お金だけでは始められないフランチャイズ
——フランチャイズの問い合わせは多いのでしょうか。
早野氏:
ありがたいことに、毎月ある程度のお問い合わせはいただきます。
ただ、誰でもすぐに始められるというわけではありません。面談の時間をかなり大事にしています。なぜこのブランドをやりたいのか、どういう思いがあるのか。そこをしっかりお聞きします。
「資金があるからできる」というより、一緒にブランドを育てていけるかどうかが大事です。だから、なかなか前に進まないケースも多いです。
アイスクリーム店ならではの初期投資
——アイスクリーム店は、設備投資も大きいのでしょうか。
早野氏:
そうですね。アイスクリームはマシンが高いです。
一般的な飲食店であれば、居抜き物件を使うことで初期投資を抑えられる場合があります。でも、アイスクリーム店の居抜き物件はほとんどありません。専用の設備を新しく揃える必要があり、それだけで数百万円かかります。
特に、うちの商品は添加物を使っていないので、保管や提供の状態が非常に重要です。普通の冷凍庫に入れるだけでは、カチカチに固まってしまいます。適度な柔らかさを保つためには、専用のショーケースや設備が必要になります。
過去に一般的な冷凍庫で試したこともありますが、かなり大変なことになりました。そこは失敗から学んだ部分でもあります。
ブランドロゴや展開は日本側で整備
——ブランドロゴなどは、マウイ島の本店で作られたものなのでしょうか。
早野氏:
ブランドロゴなどは、日本側で作りました。
マウイ島の本店は、良い意味でも悪い意味でもすべてが手作りでした。商品は素晴らしいのですが、ブランドとして横展開していくための整備はまだ十分ではありませんでした。
だから、日本で展開していくにあたって、ロゴやブランドの見せ方などは日本側で作っていきました。

今後はグッズやアパレル展開も視野に
——今後、グッズ展開なども考えているのでしょうか。
早野氏:
はい。これからグッズ展開もやっていきたいと思っています。
アパレルも視野に入れています。独自のアイテムだけでなく、コラボレーションも考えています。まだ詳しくは言えませんが、ブランドの世界観を広げるような取り組みは進めていきたいです。
店舗運営における”Leo”の活用について
——今回、店舗にサーキュレーターを導入いただきました。店内ではどのようなメリットを感じていますか。
早野氏:
これから暑くなる時期なので、冷気を循環させられるのは大きなメリットです。
電気代もどんどん高騰しています。エアコンの設定温度を必要以上に下げなくても、サーキュレーターで空気を循環させることで、店内を快適に保ちやすくなると思っています。

また、少し番外編の使い方かもしれませんが、夏場に外で召し上がるお客様向けにも活用できると思っています。屋外の席にサーキュレーターを設置して、少しでも涼しい環境でアイスクリームを楽しんでもらう。そういう使い方も試してみたいです。

セントラルキッチンでも活躍する”Leo”
——日本橋のセントラルキッチンでも、サーキュレーターは役立っていますか。
早野氏:
かなり役立っています。
ココナッツは香りのある素材ですし、アイスクリームを作る時には火を使う工程も多いので、室温が上がりやすいんです。サーキュレーターがないと、どうしても熱がこもってしまいます。
熱を逃がすこともできますし、エアコンの空気を循環させることもできます。セントラルキッチンのような作業場では、かなり活躍していると思います。
冬場の演出としての視覚的暖房アイテム”Erik”
——冬場の店舗演出についても、何か考えていることはありますか。
早野氏:
日本には四季があります。冬になると、アイスクリーム店はどうしても「寒そう」という印象を持たれがちです。そうすると、お客様の足が少し遠のいてしまうこともあります。
だから、冬場に外で食べるお客様のために、暖かい空間を演出できるアイテムはすごく良いと思っています。単に温風が出るだけではなく、「あそこは暖かそうだな」「外でも食べられそうだな」と感じてもらえるシチュエーションを作れることが大事です。
そういう意味で、冬の演出にも可能性を感じています。

ハワイの空気感を日本でどう表現するか
——香りの演出なども面白そうですね。
早野氏:
そうですね。ただ、いかにも人工的なココナッツの香りだと、少し違うと思っています。
車の芳香剤のような、作られたココナッツの匂いではなく、ハワイに行った時に感じる、あの独特の良い香り。マウイ島のお店にあった自然な空気感のようなものを、日本でも表現できたら面白いと思います。
ココナッツグレンは、単にアイスクリームを売るだけではなく、そうした世界観も含めて届けていきたいブランドです。






